バブル崩壊後、不動産金融はどのような影響をこうむったのか。マスコミは多くを伝えたが、都市部の象徴的な事例が紹介されるだけで、それを具体的かつ体系的に伝えた分析にはお目にかかっていない。実は裁判所は、地価下落の実態を知る膨大なデータを持っている。しかし、それを分析する大掛かりな試みがない。バブル崩壊の詳細と、そこからの経済再建、今後の防止策を考える意味でも、裁判所には貴重な資料が埋もれている。三友システム不動産金融研究所では、平成六年から順次競売市場の各種の分析を、東京、大阪、名古屋、横浜、埼玉、千葉、神戸、京都の地裁ごとに行なってきた。なぜこんな、一見会社の商売に関係ないことをしたのか−そこにはそれなりに理由がある。バブルが弾けたあとの平成四、五年の新聞記事などで、住専(住宅金融専門会社)についての中央省庁や金融機関の発表を見ると、不良債権の総額が細かく述べられている。ところが、その席で発表者の口から「不良債権の七〜八割は回収可能」とさらりと述べられている。不良債権の額や相手先についてはいろいろ突っ込んで聞いているマスコミの記者たちも、本当に七〜八割も回収できるか、その裏づけがどのようなものかは質問をしていない。事実、新聞紙上には「回収率は七〜八割を予想」と堂々と書かれていた。当時、私は不動産鑑定会社の立場から見て、鑑定評価額の下落状況と抵当権設定額の状況から、とてもそんな回収率は期待できないと考えていた。地価が値下がりしようとも抵当権設定額は変わらないからである。それを証拠立てる資料を裁判所の発表する競売資料からつくりたいと思って、作業を始めた。というのは、裁判所の資料以外に利用できる資料が存在しないからである。三友システム不動産金融研究所では、このレポートを「金融マンの目で見、識る資料」として、分析の終わったものから発表しているが、最近はあまりマスコミに注目されていない。バブル期の金融機関の実態を競売物件の分析から見ると、彼らのとんでもない行動がよくわかる。
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