寝室の北側には窓をつくらず、壁一面をクローゼットにして北風や冷気をブロックすることにしました。これで北東の寝室も東南向きになりました。「ダブル辰巳」の良相です。午前中は東南から明るい日が差すし、風も通ります。日中は中庭が暖かい日だまりとなり、夜になってもさほど冷え込むことはありません。中庭に格子がはめてありますから、蒸し暑い夏の夜には中庭に向かう窓を開け放して眠ることもできます。Oさんは、このプランをたいへん気に入ってくださいました。
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さて、新居の完成も間近となったある日。広い庭のある平屋建ての家を二人でながめながら、私は何気なくOさんに声をかけました。「つくづく贅沢な家ですねえ。この時代に平屋の家だなんて、それだけでとんでもない贅沢ですよ。二階建てにしておけば、将来、誰かに貸すこともできたのに」Oさんも何気なく答えました。「だめよ。仏さんの上は雲じゃなくちゃいけないの。二階をつくったら、仏さんの上を誰かが歩くようになるでしょ。それじゃあ、お父さんに申し訳ないわ」気ままな一人暮らしにこだわりながらも、Oさんは心のなかで、いまもご主人と一緒に暮らしているのだと思いました。一〇年が過ぎて、Oさんは八五歳を超えましたが、いまも元気に暮らしていらっしゃいます。